東京二期会は、ボン歌劇場およびウェールズ・ナショナル・オペラと提携し、「運命の力」というヴェルディの名作を上演した。この公演では、デヴィッド・パウントニーが手掛けた演出により、時代設定を特定しないシンプルな舞台装置が用いられ、オペラの中心テーマである「運命」が際立って表現されていた。パウントニーは、戦争賛美の場面を醜悪に描き出す一方で、実際の戦争映像を舞台上に投影することで、人類が愚かな戦争から逃れられない「運命」を皮肉交じりに示した。
この演出の中でも特に印象深いのは、「運命の神」として舞台上に登場するキャラクターである。「神」が杖を床に打ち鳴らす動作は、オペラ冒頭の「運命」の動機と連動し、物語中の重要なシーンでその存在感を放っていた。この役柄は、ヒロイン・レオノーラの侍女クッラや軍隊付きの女性プレツィオジッラも兼任し、「神」が人間界に介入する様子を示唆していた。特に、この「神」役を演じた花房英里子(4日)と加藤のぞみ(5日)の存在感は、観客に不吉な予感を抱かせるものであった。
公演が行われた初台の新国立劇場では、4日と5日の歌手陣がそれぞれ高い評価を受けた。特にレオノーラ役を務めた大村博美は、どの音域でも安定した歌唱で舞台を支配し、観客から絶賛された。また、指揮者八嶋恵利奈が率いる東京フィルハーモニー交響楽団の演奏も見事であり、音楽と歌唱が完璧に融合していた。このような全体的なバランス感覚は、オペラ「運命の力」を存分に堪能することができる要因となった。
音楽評論家・安田和信によれば、「この公演はヴェルディの作品があまり上演されていなかった日本国内で、非常に価値のあるものだった。特に5日の公演では、歌唱面でも総合的に高く評価されることができるだろう」と述べている。このような意見は、「運命の力」を初めて観る人々にも大きな感銘を与えたと言える。
この公演では、戦争や愛憎劇が織り成す複雑な運命を巧みに描写し、観客に深い印象を残した。東京二期会と提携する歌劇場の連携は成功し、日本でこの作品がより多くの人々に知られるきっかけをつくったことだろう。
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