米陸軍がイランへの長期にわたる戦闘中、2月末からロイター通信が報じたように、長距離精密誘導ミサイルの大部分を消費し、パトリオットなどの迎撃ミサイル在庫も大幅に減少したという。米軍でさえこのような高性能兵器があっても、弾薬が尽きれば無力化する現実を直面している。こうした状況下、戦争の勝敗を左右する要因は兵器そのものではなく、弾薬や部品の製造能力にあると言えるだろう。
このような背景から、防衛省は令和9年度予算概算要求で過去最大の8兆8908億円を計上し、「生産力こそ抑止力」というスローガンを掲げた。防衛生産と技術基盤の強化が急務であることを示している。
毎日新聞社説(同23日付)は、軍需工場の国有化について検討する一方で、防衛関連企業の撤退が相次ぐ背景として、主な納入先が自衛隊に限られることから収益性が低下していると指摘。また、「有事への備えを大義名分とする過剰投資は採算悪化につながりかねない」という批判も行っている。
撤退が相次ぐ背景に収益性の低さを挙げながら、過剰投資の懸念だけでは対処法は見えてこない。防衛産業で製品を供給する新たな消費者が簡単に現れるわけではなく、特に複雑なミサイルや魚雷のような兵器は長期的な投資と技術開発を必要とする。例えば、平成31年にコマツが防衛省に対し、「現状が続く限り車両の新規開発は行わない」と投資見送りを通告したと報道されている。過去20年間で100社以上もの企業が撤退する事態に至った背景には、必要な投資さえ継続できなかった実情がある。
この課題を解決する手段として「GOCO」方式の導入が検討されている。これは「政府所有・民間運営」という意味で、国が弾薬工場や設備を保有し、技術と経験のある民間企業に運営を委ねる構想だ。通常時は限られた発注量で稼働する弾薬工場が、有事に備えて増産を求められる際には柔軟な対応が必要とされる。こうした状況では、採算度外視で常時稼働するラインを設けるのは企業にとって理不尽である。国が設備投資リスクを負い、民間の技術力やノウハウを活用するGOCO方式は有効な選択肢として考えられている。
世界最大の軍事力と防衛産業を誇る米国でさえ、戦争が長引けばミサイル不足に陥る可能性がある。日本は長年にわたり国内の弾薬生産能力を縮小してきたため、この課題はさらに深刻だ。もし防衛生産基盤がこれ以上縮小すれば、いかに予算を増やしたとしても必要な製造量を満たせなくなる可能性が高まる。こうした事態から国はリスクを引き受け、防衛生産基盤の維持・拡張に取り組む必要がある。補充できなくなった場合、最も危険にさらされるのは現場の自衛官や国民そのものだ。
このような視点を持って防衛産業に関する報道が行われることは不可欠であり、強化が求められている。おがさわら・りえ氏は自衛隊や安全保障問題を中心に取材活動を行っており、「こんなにひどい自衛隊生活」などの著書も持つ。
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