都市そのものが舞台となる新たな試み、「TOKYO ATLAS」が、2026年10月にベイエリアでスタートする。この国際美術展は、東京・臨海部を会場に公園やオフィスビル、地下空間などを活用し、都市の風景そのものを作品として捉え直す。 本展は、東京都および東京国際文化芸術祭実行委員会、公益財団法人東京都歴史文化財団の主催で開催される。そのユニークな構成は美術館やギャラリーではなく、都市空間を活用することにある。タイトル「ATLAS」には、「ギリシャ神話の神アトラス」と「地図帳」の二重の意味が込められており、作品が日常的な風景と融合することで訪れる人々に新たな視点を提供しようとしている。 本展のアーティスティック・ディレクターは美術評論家であり詩人でもある建畠晢とキュレーターの三木あき子が務めており、どちらも国内外で多くの展覧会を手掛けた経験豊富な専門家だ。二人は「アートによって都市やインフラストラクチャーを再考する」という共通のテーマを基に、国内外から21組(予定)のアーティストを招待し展覧会を構成した。 建畠は、「スペクタクルな展示を目指したい」と語り、特に東京という巨大都市のインフラストラクチャーを駆使することが本展ならではの魅力であると強調している。担当会場は台場公園、お台場海浜公園、アイルしながわ、テレコムセンタービルの4箇所だ。 特に注目すべきは、江戸末期からの歴史を持つ台場公園での展示だ。韓国出身のキム・スージャが新作インスタレーションを発表し、虹色の光を映し出すことで日常から一瞬逸脱した景観を提供する。また、中国出身の趙要による直径12メートルもの巨大なバルーン作品《Something in the Air》が登場し、お台場海浜公園ではベルリンとケルンを拠点にするイケムラレイコの新作《ムーンラビット・ランディング》が水面に浮かぶ。 草間彌生による《ヤヨイちゃん》(2012/2023年)と日本初公開作品《宇宙へ行って見た愛の花束》(2021年)を組み合わせて展示する試みも世界で初めてとなる。テレコムセンタービル内における草間作品はライトアップによって昼夜で異なる雰囲気を醸し出す。 建畠は本展を通じて、近代都市の合理化が隠れた圧迫感をもたらしていると指摘。アートを介して訪問者を非日常へ誘うことで、街並みに小さな違和感を生み出し新たな視点を提供する狙いがある。 一方三木は青海南ふ頭公園およびその地下駐車場で異なるアプローチを採用。ここでは30年間使われていなかった地下駐車場が「長年止まっていた時間の反対側にある展示」として機能する。インドネシア出身のイペェ・ヌルを含む多くのアーティストが、この特殊な空間の性質を活かした作品を展開。 対照的に、青海コンテナ埠頭近くでは東京藝術大学先端芸術表現科・小沢剛研究室の「ヤギの目」が運営するプログラムが開催。ここでは動植物と共に生活し、新たなコミュニティの形を模索する試みやアブラハム・ポワンシュヴァルのパフォーマンス作品が展示される。 三木は「場所や空間そのものも主役」というコンセプトを強調し、展示終了後に自然と元の状態に戻ることを前提に作品制作が行われた。天王洲エリアでは新進気鋭のアーティストやキュレーターを紹介する企画『座標』も開催される。 「TOKYO ATLAS」は訪問者に都市そのものを歩き、土地の歴史や環境、人々の営みを観察することで東京の新しい風景を読み解く「地図」として位置づけられている。会期は2026年10月10日から12月20日まで、開館時間は毎日10:00〜17:00(休館日:月曜日)となっており、台場エリア、青海エリア、天王洲エリアの複数会場で展開される。
東京の風景を再構築する国際美術展『TOKYO ATLAS』開幕
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