4人組ロックバンドである「パール兄弟」が今年デビューから40年を迎えた。この節目の年、彼らは10月3日にLINE CUBE SHIBUYA(東京都渋谷区)にて記念公演を開催する予定だ。この機会に新作アルバム「発射。」も先行して販売されることになっている。1980年代後半、テクノやニューウエーブが日本の音楽シーンで衰退し始めた中、パール兄弟はその転換点に登場し、時代を超えて活動を続ける「ハイブリッド」な存在として注目されている。フロントマンのサエキけんぞう(68)は、「走り続けられたことが良かっただけではなく、その結果、興味や刺激が増え、更新されている」と熱く語っている。
パール兄弟は昭和58年にサエキとギターの窪田晴男(67)らにより結成され、61年にアルバム「未来はパール」でデビューした。その時期はYMOの「散開」が象徴する通り、テクノやニューウエーブといった音楽ジャンルが衰退を迎え始めた年でもある。サエキはニューウエーブバンド「ハルメンズ」の一員として活動し、その後こう振り返っている。
「MIDI(電子楽器のデジタル通信規格)が登場した58年は、テクノの音作りが安価で手軽になった一方で、そのジャンル自体が終焉を迎えつつある時代だった。パンクもまた衰退期に入っており、私たちはその残骸から生まれてきたと言える」
彼らが目指したのは、「ロックのフォーマットと歌謡曲をストリート感覚で結びつけ、日本的情念をロックフィルターを通して客観的に取り込んだサウンド」だった。そのユニークな名前「パール兄弟」は、「すべてが『パー』になる中で生まれ、また窪田の愛称「パルオ」からきている」という理由によるもの。この名称には、「兄弟仁義」を象徴する日本的情念が込められている。
「私たちの音楽は、理論や概念ではなく、血でつながっているという意識で作られました」とサエキは語る。しかし40年を経て、バンドメンバー同士の関係性は親子以上に深まっている。
新たなアルバム「発射。」は8曲入りで、オープニングトラック「ぬくもり列車」では人気声優の水樹奈々(46)がコーラスと車掌役を担当しているカントリーロックナンバーで幕を開ける。これまで「尖った」イメージが強かったパール兄弟の意外な牧歌的なアプローチは、多くの人々を驚かせている。
「今は『とがって』いることが求められない時代になった。現代ではコンプライアンスが中心的な価値観であり、昔の逆転を遂げている。そうした背景から『ぬくもりこそがとがっている』と考えるようになった」とサエキは笑顔で語る。
アルバムの中では、ニューウエーブを彷彿させる楽曲が登場する。「MakeでDraw」では、「メーク途中、未完成な自分のまま街に出よう」と歌われており、サエキは「完成したものを振りかざしてもけんかにしかならず、恋愛というのは未完成同士がつながることが多い。完成してしまうと話すことすらなくなってしまう」と語る。
自身も未完成であると述べたサエキによれば、「完成した人間ならバンドを組む必要はない。『お互いちょっと足りない、負い目を持つ者たちの集まりがバンド』であり、ザ・ビートルズも一人ではスタジオミュージシャンにはなれないからこそ結成された」という。
パール兄弟の音楽はニューウエーブ、テクノ、フュージョン、歌謡曲と多様なジャンルを融合しており、その核心は40年間一貫して変わっていない。
「新しいものを取り入れることで何かが壊れてしまう可能性があっても、それに挑む。そんな痛みを覚悟することがニューウエーブだ」と語るサエキ。テクノの時代にはコンピューターで新しい音が生まれた一方、ドラマーの必要性が問われた。名手細野晴臣(79)も多くの曲でシンセサイザーを使って低音を担当していた。これは生楽器奏者にとって痛みでもあった。
しかし、そんな痛みを伴うニューウエーブが今のコンプライアンス社会に適合するだろうか?
「AIで作詞作曲が可能になる時代に、人間の創造力が失われてしまう。便利さよりもどんな痛みを伴っているかを考えることが重要だ」とサエキは語り、「むしろニューウエーブであり続ける使命感すら湧いてくる」と力強く述べている。
そんな彼らの活動はまだまだ続き、40年を経てもサエキが最も意外に思ったことは、「年齢を重ねても刺激が増え続ける」という事実だった。「続けてみないと分からなかった。メンバーに対する好奇心や音楽への興味は常に更新され、バンド自体もより良くなっているようだ」と語る。
この継続性を支える条件として「ロックについて考え続けられること」がある。「起きてから寝るまで、ロックの本質やジョン・レノン、ポール・マッカートニーなどの先達たちの言葉を思い返し続けている。記憶はただ思い出すものではなく、持続させることが大切だ。それが僕にとって人生そのものであり、文化そのものだ」とサエキは語り、10月3日の記念公演「パール兄弟40周年 未来はパール2026」への期待を高めている。
このイベントには、水樹奈々もゲストとして出演する予定で、多くのファンがその歴史的な瞬間を目撃しようと待ち望んでいる。(石井健)
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