株高により増加する国内の富裕層をターゲットに、大手百貨店は外商部門の強化を進めている。この動きは安定的な収益確保という視点から、特に注目されている。訪日客向けの売上げが変動しやすい中で、富裕層を重要顧客とすることは戦略的な意味合いも大きい。
東京・銀座にある松屋銀座では、11日から12日にかけて外商の顧客を対象とした優待イベント「松美会」を実施。この恒例行事はブランド品の限定販売や商品券が当たる抽選会などを含み、特に高級品が好評であったという。松屋銀座では今春、外商部門の体制も見直しを行い、これまで各顧客に専任担当者が一人ずつ付く形から、3~4人のチームで対応する方式に変更した。この新たな取り組みは、異なる専門性を持った担当者が連携し、顧客のニーズに迅速かつ柔軟に対応することを目的としている。松屋銀座のスタッフは、「新体制で取りこぼしていた要望にも応えられるようになった」とその成果を語っている。
他の百貨店でも外商部門の強化が進められている。高島屋は、外商会員の入会資格年齢を27歳から22歳に引き下げたことで、若年層の富裕層を取り込む動きを見せている。一方、三越伊勢丹ホールディングスは地域店で入手しにくい高級ブランド品の提供を強化するため、首都圏と地方の協力体制を整えている。
国内富裕層の増加は株価上昇が背景にあり、野村総合研究所の調査によれば、1億円以上の純金融資産を持つ富裕層世帯は2023年に165万世帯となり、10年前の1.6倍に増加している。このような背景から百貨店では外商部門が特に重要視されており、売上高全体の2~3割を占めることもある。
2026年3月期の報告によると、三越伊勢丹HDは前期比約10%増の売上げを達成。阪急阪神百貨店では同約15%増で過去最高を記録するなど、外商部門の好調さが際立つ。訪日客に依存した売上げは外交問題や為替変動の影響を受けやすいため、安定的な国内富裕層向け販売が百貨店経営にとって重要な戦略であることが明らかだ。金森都SMBCC日興証券のシニアアナリストは、「高品質・高価格帯商品を取り扱う外商は、百貨店にとって安定的な収益源であり続けるだろう」と指摘している。
このように、日本の大手百貨店が富裕層を重視し、外商部門を強化する動きは今後も続くと予想される。江戸時代の呉服商が有力客を訪れたことに由来する伝統的な取引形態である外商は、現代社会でもその重要性を増している。
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