ノーベル化学賞を2002年に受賞した田中耕一さん(67)は、島津製作所のエグゼクティブ・リサーチフェローとして引き続き活躍する中で、新たな学術的挑戦を始めることを決意しました。彼は、「もうひと花、何かに取り組む必要がある」との思いから、東北大学の国際卓越教授に就任する運びとなったことを発表しました。これは28日、同社と母校である東北大が東京都内で開催した共同記者会見で明らかにされました。
田中さんは10月1日付けで国際卓越教授の職を新たに担い、東北大学が設立した「異分野融合計測イノベーションセンター」で研究開発への助言や若手育成に尽力することになります。彼はこれまで島津製作所での活動を続け、両立させる意向です。
田中さんが新たな取り組みを始める背景には、「ノーベル賞受賞後、数百回の講演や講義を重ねてきたが、最近ではまだ十分に伝え切れていないと感じ始めた」という自己評価があります。そこで彼は、自身の研究で得られた知見や未完全に発展したアイデアを含んだ20から30本のオンデマンド動画を制作し、「若い世代が新たな視点を持つきっかけとして活用してほしい」と述べました。
異分野融合に力点を置く同センターでは、医学や工学、農学など多岐にわたる分野の研究者が集結し、協働してイノベーションを促進します。電気工学から化学へと異分野で活躍した田中さんは、「異なる背景の研究者が集まれば、思いもしなかったような革新的アイデアが生まれる可能性がある」と期待を示しました。
研究面における田中さんの主要な目標は、彼のノーベル賞受賞に大きく貢献した技術―タンパク質や他の巨大分子を壊さずにレーザーでイオン化する方法を基礎とした質量分析法を、約1000倍高度化することです。この進展が実現すれば、病気の超早期発見などにつながる可能性があります。田中さんは「自分の頭脳を活かしてできる限り努力したい」と笑顔で語ったことで、彼の学術的探求心が今後も続くことを示唆しました。
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