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新しい進化理論を広めたい: 太田朋子さんの「ほぼ中立説」について知っておくべきこと

新しい進化理論を広めたい: 太田朋子さんの「ほぼ中立説」について知っておくべきこと

私たちは、常に伝えたいことがあります。その一つは、好きな人々や影響力のある理論に関する話です。今回は、国立遺伝学研究所名誉教授である太田朋子さんが提唱した「分子進化のほぼ中立説」に焦点を当てます。この理論は、チャールズ・ダーウィンの「種の起源」以来、進化生物学の常識を覆しました。

太田さんとの出会いは平成20年(2008年)春に遡ります。彼女の研究について話す姿が、非常に生き生きとしていたことを覚えています。記者として取材した際、太田さんは自ら車で遺伝学研究所から三島駅まで送ってくれました。この時の交流が忘れられず、多くを学べた経験となりました。

太田さんの「ほぼ中立説」は、進化生物学における一つの革新であり、分子レベルで起こる進化プロセスにおいて、「少し不利な変異」が重要な役割を果たすという考え方です。これまではダーウィンの「自然選択説」が主流であり、進化は有利な形質や能力を持つ生物が生き残ることにより起こるとされていました。しかし太田さんの理論は、この考え方を覆し、少なくとも一部では不利な変異も進化プロセスに寄与する可能性があることを示唆しています。

20世紀の終わりごろから、タンパク質やDNA分析技術が急速に発展したことで、「ほぼ中立説」が自然界の現象と合致することが確認されました。これは科学的な進化論における重要な一歩です。

太田さんの理論は、生物進化において競争だけでなく共生もまた重要な役割を担うことを示しました。この観点から見ると、能力が高い「エリート集団」よりも能力差のある「共生集団」が長期的には存続する可能性があります。これは地球上で38億年にわたって進化を遂げてきた生物群にとって、競争と共生の両輪が不可欠であることを示唆しています。

太田さんの「ほぼ中立説」は国際的に高く評価され、2015年にクラフォード賞を受賞しました。この賞はノーベル賞と同様にスウェーデン王立科学アカデミーが選考するもので、数学や生物科学などにおける優れた業績を称えます。

しかし、一般社会ではダーウィンの「自然選択説」的な思想が根強く残っています。科学力向上を目指す日本の政策も競争原理に偏重した結果、逆効果となるケースが見られました。ダーウィンの進化論は間違いではありませんが、「生存能力が低い個体が淘汰される」という観念を再評価する必要があります。

産業革命以降、人類の進化も競争に偏った方向へと舵を切りました。しかし今やその推進力は弱まり、共生の要素が欠落しています。この状況を改善するためにも、若い世代に「新しい進化論」を知ってもらうことが重要です。

太田さんは今月93歳を迎えましたが、遺伝学研究所への訪問を週に1度程度続けています。彼女の研究に対する情熱溢れる姿と笑顔は私たちの心に深く残ります。

「伝えたい」思いや「好きな人々」を通じて、新しい進化理論が広まっていくことを願います。この記事を読んでくださった皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。(なかもと てつや)

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