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「正しいことをするのに萎縮しない社会に」公益通報後の訴訟戦争を乗り越えた男性

「正しいことをするのに萎縮しない社会に」公益通報後の訴訟戦争を乗り越えた男性

正しい行動が結果的に評価されるべきだという信念を持ち、不安な中で判決待ちの状況に立っていました。東京高裁は今月3日、50代男性に対し、かつて勤めていた医療機器販売会社から約4788万円の損害賠償を求められている案件の判決が下されました。男性は同社内部での不正行為に関する情報提供を通じ、会社から解雇と訴訟という形で反撃を受けていました。

元々、この男性は医師への現金支払いが内部で行われていることに気付きました。その情報を大阪府警に提供し、結果的に刑事事件に発展。これが引き金となり、会社から機密漏洩の容疑で訴えられることになったのです。

「相手の訴えは認められませんでした」。法廷を出て弁護士より知らされ、勝利を確信するも、数年間続いた会社との対立に思いを馳せました。男性はこれまで複数の企業で経理のプロフェッショナルとして活躍し、2016年に「スター・ジャパン」(当時)へ入社。その後、経理課長として会社に尽くす生活を送っていました。

しかし、彼の心境は変わり始めます。「医師に現金を渡したい」という上層部の発言がきっかけで、売り上げ向上策として不正な方法が取られていることに気付くのです。特に、国公立病院の医師を相手にした場合は贈収賄にあたる可能性もありました。会議後、その指示に従えない旨を部長に伝えると、「業務命令に従わなければ処分の対象になる」と忠告されます。

計画はすでに実行段階に入っており、男性のもとへ代表が決裁した支払い依頼書が次々と届けられていました。医師名や金額の不審な点を確認し、彼は会社の行動に疑問を抱き始めます。

その後、男性は21年1月から社内データベースで医師への支払い記録などをUSBメモリーに保存し、複数の警察本部に情報提供。これがきっかけとなり、22年4月に会社との間で激しい応酬が始まりました。

同年10月には解雇されるという結果に至りますが、男性は続く23年2月に不当な解雇として会社を提訴。その後も大阪府警の捜査や関係者への贈賄罪での刑事処分が進む中、24年7月には会社から新たな訴訟を受けます。

公益通報者保護法では、公益通報を理由とした解雇は無効であることが定められており、男性の行動も正当化されました。しかし、会社側は「スラップ訴訟」として嫌がらせを目的に賠償請求を試みます。裁判中、男性は収入源を探しながら法廷で追及に応じるという過酷な状況に置かれました。

東京高裁の谷口園恵裁判長は、社内資料の持ち出し行為が「捜査機関への情報提供という正当な目的を果たしていた」と判断。事件に無関係であっても、公益通報者が求められる情報を提供することは困難であると理解を示しました。

最終的に会社側の上告はなく、判決が確定。男性は今後、公益通報者保護法の改正を求める署名活動を行い、これまでに4万人以上から賛同を得ています。この経験を通じて、「正しいことをするのに萎縮しない社会を目指したい」と力強く語っています。(中村俊平)

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