名古屋を舞台にした愛知アジア競技大会(読売新聞社協賛)において、陸上男子マラソンで山下一貴選手(三菱重工業所属)が見事な走りを披露しました。彼は2時間10分49秒の記録で金メダルを獲得したのです。このレースでは、女子マラソンにおいても矢田みくに選手(エディオン所属)が堂々たる走りを見せ、2時間27分56秒で3位という結果を収めました。その他の種目では、男子400メートルで中島佑気ジョセフ選手(富士通所属)が45秒22で3位に入り、女子1500メートルでは田中希実選手(豊田自動織機所属)が4分6秒14のタイムで同じく3位を飾りました。
金メダル獲得後、ゴールテープを切ると駒大時代から親しまれていた「イチタカスマイル」が爆発的に広がりました。リードを確立しつつも最終ラインでの失速を恐れ、「あそこ(ゴール前)でつるかもしれませんから」という心境だったと山下選手は語っています。彼にとってこの42.195キロは、トラウマとの長き戦いでもあったのです。
3年前、世界陸上競技選手権ブダペスト大会でのデビューでは入賞争いを演じていた最終2キロ地点で脚がつってしまい、11位に終わるという屈辱を味わっています。今年の2月には大阪マラソンでも同様に脚がつって失速するなど、繰り返される苦しみを抱えてきました。
レース当日も「10キロ過ぎからずっと『つらないといいな』と思っていた」と山下選手。しかし、彼はレース前に対策を練っていました。序盤から終始視線を下げて走るのは苦しいことではありませんでした。それはトレーナーから助言された「過度に前傾しがちな骨盤を立てる」ためだったのです。この方法が功を奏し、脚への負担が軽減され、「つる症状は全く出なかった」とのことです。
レースでは、31キロ過ぎで上り坂に差しかかった際、集団を3人に絞るという局面がありました。さらに35キロ過ぎではインド選手との一騎打ちになりましたが、山下選手は自信を持ってペースアップしました。この勝利で男子マラソン日本代表として2大会ぶりの金メダルを獲得したことになります。これは井上大仁選手以来という快挙です。
ブダペスト大会後、右太もも裏の張りが約1年間続き低迷していた山下選手でしたが、今回は万全の体調を取り戻し、「走ることが楽しくなった」と喜びを語っています。心身共にトンネルから抜け出した29歳の彼が、ロサンゼルス五輪代表争いで有力候補として名乗りを上げました。
一方、女子マラソンでは矢田みくに選手も見事な走りを見せ、2大会ぶりの表彰台入賞を果たしました。22キロ付近で転倒するアクシデントがありましたが、すぐさま立ち上がって集団に追いつき、終盤では先頭を引っ張るなど積極的なレース運びを披露しました。1月の大阪国際女子マラソンで日本歴代6位となり、自己最高記録(2時間19分57秒)も更新した26歳は、「悔いのないレースができた。五輪への第一歩」と笑顔を見せています。
このように、山下選手と矢田選手の活躍は日本陸上界に新たな希望をもたらしました。彼らが次世代を担う存在として成長し続けることで、今後の国際大会でもさらなる活躍が期待されています。
(西口大地)
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